vol.12 サヨナラ和歌山、さよなら〆ちゃん



白浜駅に到着なのです

三段壁を出たときは11時近かったでしょうか。そろそろ白浜駅に向かい、早目の昼食を取ることにしました。なんせ12時35分発の「スーパーくろしお12号」に乗っちゃうまでに、ご飯を食べておかないと、新大阪からは信州直通の高速バスに乗り換えですから(しかも乗り換え時間が短い!)、ヘタをすると2食連発で駅弁を食べるハメになってしまうのです。

おりしも天候もくずれ始めまして、もの凄い雨がレンタカーの屋根を叩きはじめました。

断続的な豪雨の中、一行は白浜駅に到着です。レンタカーを返して身軽になってから、昼食をとれる場所をキョロキョロと探し回ります。白浜駅は規模的にはそれほど大きくはなく、私の街の駅と同程度の大きさですが、さすが観光地だけあって、駅前からはひっきりなしに観光バスが出発しています。

とりあえず一番近間というコトで、駅正面のおみやげ物屋さん2階の、喫茶店風の軽食屋さんに入るコトに決定。ゴタゴタとお土産の梱包らしきものが置かれた階段を登り、店内に入りました。

ここで義母と妻はサンドイッチと野菜サラダを注文。私は朝の三杯メシがたたって、まったく食欲がありませんので「くまの地ビール」のラガータイプ(他に黒ビールもあり)を頼みました。

地ビールはホップの香りが強く、たいがいの地ビールがそうであるように、雑味がいろいろ感じられてオモロい味といったトコロでした。ただ、私にはホップの苦みが強すぎて「もう一杯飲もう〜っと」というキモチにはなれなかったのも事実です。この地ビールをチビチビ飲(や)りながら、窓越しに白浜駅のロータリーをぐるぐる回っていく車をボンヤリ見つめつつ「とうとう終わりだね〜」「終わっちゃうよね〜」などと3人でシンミリ話したりしてますと、先ほど書きました観光バスの運転手さんらしき集団どやどやっと入店してきます。

慣れた口調で「オレね月見うどんとゴハン」などと注文し、ワシワシと食べているのですね。その風景がとっても好ましいんだなぁ。観光地の表の顔だけじゃなくて、こんな風に一所懸命働いている観光バス運転手のオジサンたちが、いつもの場所で、いつものお昼を食べている姿ってとってもカンドーするのです。なんか、人間が確かに生きてるってカンジがズンズンと伝わってくるのです。

ナニゲなコトにカンドーしてしまう自分を、少し地ビールの酔いがまわってきたのかな?などと、ココロの中で笑いながらジョッキを傾けていますと、妻たちが頼んだ野菜サラダが運ばれてきました。これがまたある意味カンドーものでして、写真の様にサラダの中にブあつい「卵焼き」がトッピングしてあるのです。ゆで卵ならいざしらず、卵焼きはスゴイ!っと、またまたカンドーしてしまった私でした。ホントに和歌山は不思議のクニなのです。^O^



サヨナラ和歌山、さよなら〆ちゃん

さて、いよいよ電車の発車時刻が近づいて来ました。これから2時間半ほどで新大阪に到着、その後は高速バスで帰郷ということになります。無事旅行を終えた安堵感と、終わってしまった寂寥感を、キヨスクで購入した「千切りかまぼこ」と一緒に噛みしめながら「スーパーくろしお12号」のシートに身をゆだねます。

ほろ苦い味の「エビスビール」で軽くノドを潤したあとは、熊野詣(もうで)の写真をラベルに使った地酒「世界一統(会社名です。すごいネーミングではあるなぁ)のふるさとカップ」を飲みながら、楽しかった和歌山旅行の想い出に思いを馳せます。

最初から最後まで、ドコへ行っても旅人に優しかったワカヤマ。観光地にも、ホテルにも、地元の人たちの優しさやヒョウキンさが満ちあふれてました。もちろんトホホなこともありましたが、そんなコトもこんなコトも全部ひっくるめて、とっても愛すべきクニなのです。

そして、そして、〆ちゃんご夫妻の温かいココロ入り江の向こうにご夫婦で立って、いつまでも、いつまでも手を振っててくれた姿が、心地よく酔いがまわり出した私の脳裏にゆっくりと浮かんできます。サヨナラ佳き国ワカヤマ…、さよなら善き親友〆ちゃん、そして奥さん…

そして、そして…また逢いましょうね。

地酒とともに熱いモノを心に飲み込んでいきますと、ゆっくりとほぐれつつあるココロの中に、先ほどの昼食を取ったお店の階段に貼ってあったポスターのコピーががよみがえってきます…

また…、…必ず帰ってきますからね〜



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