vol.11 GEORGEよ!オマエまでもか!



一夜明けて…

とりあえずですね、イキドオリながらも熟睡してしまったのです。で、翌朝は窓をたたく雨音で起きてしまったのです、5時半ころ。まだ母子二人は夢の中ですから、カーテンの隙間からベランダに出て、ソトを覗いてみますと……あいや〜!やっぱり写真のような雨降りです。本当なら入り江の奥に海が広がっているハズなんですが、雨でケムってまったく見えません。しっかり雨!

もうヤケですな、こ〜なりますとね。夕食はハズレで、今日は雨。しかも最終日でお昼には帰路につかなければならない…「えぇい!ハラがたつ!」となんだか正体不明のモノに悪態をつきながら、とりあえずベランダから室内に戻ります。

でもって、沈みゆく気分を癒(いや)すために、冷たいビールでも一杯、と、冷蔵庫のドアを開けますと…ありゃ?ありゃりゃ?ドアが開かない!よくよく注意書きを見れば…

「この冷蔵庫はAM5時に自動的にロックされます」

もう…トホホの極みです。(ーー;) しかし、なぜ5時に自動ロックなんだぁ!朝から冷たいビールやウーロン茶が飲みたいヒトだって大勢いるはずなのです。しかも注意書きをよく見ると時間の部分は手書きです。…っていうことは、ロック時間の設定ってのはホテルが任意に決められるってコトでしょ?どういう根拠で朝の5時ロックにしたのでしょう?やっぱり7時とかに設定しちゃうと、会計の時に立て込んで面倒くさいからなのでしょうか。なんかドアをロックしちゃうっていうダンコたる実力行使までされると、暗に「あんね、おまーらがね一斉にチェックアウトはじめると、ワシらがテンテコマイでしょ?で、トロトロしてると怒りだす客だっているしね。だから朝は冷蔵庫なんか閉めちゃうの!」って宣言されているようで、ムッっときちゃいます。

たしかに団体さんなんかが一斉にチェックアウトしたら、飲み物の計算なんかパニックなんでしょうけども、せめて個人客の冷蔵庫くらいロックを解除するとかのココロ使いが欲しい、って思うのは私のワガママなんでしょうか… すっかりヌルくなってしまったテーブル上の昨夜の飲みかけウーロンを、ずるずるとすすりながら、ガックリと肩を落としてしまったワタシなのです。


昨夜からの、あまりのトホホ連発に、こりゃ早いトコメシ食ってズラかったほうが良いと判断。7時半からの朝食もそこそこに(と言いましても、私としては、旅館の朝飯でのおかわり三杯コースは死守しましたが…)、出発の準備に入ります。

楽しみの朝風呂も、室内のシャワーのみで、大浴場はパス!昨夜もフテ寝しちゃいましたから、結局白浜○○の大浴場には一度も入らなかったというコトになります。これはあらゆるワタシの宿泊経験の中でも初体験のコトでした。ううっ



GEORGEよ!オマエまでもか!

9時出発という、我が家の旅行としては異例の早いチェックアウトを済ませて、一行は昨日入り口がわからずに見逃してしまった「千畳敷」へと向かいます。昨夜ホテルで地図を広げて確認した所、どうやら「三段壁」のスグ近くにあるらしいコトは判りましたので、今度は慎重にソロソロと車を走らせていますと、「千畳敷→」という目立たなくて、判りづらい看板を発見!「こんな看板ぢゃわからんぞ!」とノノしりながら(ホントによく激怒するワタシではあります)、「千畳敷」に到着です。

朝からの雨はなんとか曇りへと変化してますが、それでも「降るぞ、降るぞ、今にもフルぞ!」っていうカンジの空が広がっています。したがって海もかなり荒れ気味でして、千畳敷の広い岩棚に波しぶきが「ざっばわぁぁぁん」とブチ当たっています。

千畳敷の景観よりも、そのハゲシイ波しぶきに「おおっ!」っと一同カンゲキ。妻は手持ちの使い捨てカメラで5分ほどそのストロングな波を取るために、ファインダーを見続けていました。

波と岩棚の境界辺りでは、勇気があるといいますかムボウと表現したらよいのか判別しかねますが、男性数人が「おりゃあ!」ってなポーズで、波と戦う姿勢をとりながら、カノジョらしき女の子に写真を撮ってもらってます。私にはあんなにアホっぽいユウキは無いにしても、波にさらわれない程度に岩棚を歩いてみようと思い、駐車場から岩棚に続く道を下り始めました。母と妻はあまりの波のハゲシサに、降りていく意欲を無くして、遠くから見ています。

うわ!

いざ岩棚に降りてみてビックリ!なんと広い岩棚一面に「いたずら書き」がビッシリと書き込まれているのです。

写真を見ていただくとわかりますが、岩といい床といい、すべて「タカコ&ヤスト」だの「ラブ ゆうこ」だの、アホバカ観光客の呪文が大小ビッシリと彫り込まれています。中には「ヒロシ  ともひと」なとど、アヤシゲなジュモンもありその風景は、かのラフカディオ・ハーン(小泉八雲)先生著の「耳無し芳一」で、悪霊にとりつかれた芳一を救うために、高僧が芳一の全身にビッシリお経を書いた話を思い出させます。しかし、お坊さんが芳一の耳にお経を書き忘れたため悪霊に耳だけ取られてしまったんですよね。

でも、ここ千畳敷のジュモンは書き忘れた場所なんてないのです。もう一面ビッシリ。でもって、オドロクことにそれが全て彫ってあるんです。中には一文字1メートル四方くらいの大きさでドでかく彫ってある。その努力と執念には、ただただアゼンなのです。試しに小石で壁をこすってみましたところ、意外に簡単にキズがつきましたから、岩の質もモロイものなのでしょうが、それにしてもゴクローさんな話です。

だけどなぁ…記念と称して、自分や友達の名前を岩に彫り込んで、景観をメチャクチャにして「みんなやってるからイイヤ」って納得しちゃう日本人って、一体…。

…まぁですね、そう言うワタシだってほめられた日本人じゃないコトは自覚してます。ヒトが見てなきゃ何するかわからん部分も、十二分に持ってます。でも、それも程度モンダイでありまして、どっかの毒入りカレー事件の容疑者宅の壁に「バカヤロー」って書いたり、アホバカ暴走族みたいに「○○参上!」などと、公共の壁にスプレーしたりするような、ナサケナイ人間にだけはなりたく無いのですね。
だけど、日本人って、ヒトが見てなきゃそういうヘーキでやっちゃう民族ではありますよね。アメリカみたいに開拓したり、戦って(まぁインディアンの皆さんからみれば、ざけんな!ってコトでしょうが)作り上げた国じゃないから、自国の自然に対する思い入れも非常にカルいものがあります…

って、ナサケないキモチで駐車場に戻ろうとしましたら…

……ったらあったんですよ!このイタズラ書き!

モノすごくでっかい字でですね「GEORGE」なんです!も〜こりゃ絶対ガイジンさんのシワザですね!我々ニホン人だけぢゃなかったのだ!わははは。おい!ジョージよ!オマエまでもか!アホ観光客はワールドワイドだったのだ!

でもってGEORGEくんなんか、ミネソタ州なんかに帰って、恋人にジマンしてんだろうなぁ。やっぱデートでハンバーガーかなんか食べながら「ねえシンディ(なぜかカノジョの名前なのだ)ニホンはステキな国だったぜ。とくにWAKAYAMAにあるセンジョウジキっていうトコロには、ボクの名前を刻んできたんだ でっかくGEORGEってね」な〜んてジマンしてんでしょうね。でシンディも「WOW!それはエキサイティングでファンタスティックだわぁ GEORGE! あなたの作品をぜひ、ワタシも見てみたいな〜」なんて、キラキラ瞳でカレを見つめてるんでしょうね。もうGEORGEくんなんか調子乗りまくりで「OK、シンディ。カンタンなことさ。ボクたちの新婚旅行をニホンにすればいいのさ」な〜んて、ビシッとクドいちゃったりするのです。

ままっアホ話はさておいても「GEORGE」の文字を発見してから、さらにアチコチを注意深く見てみると、結構あるんですよね。英語のイタズラ彫り

う〜ん、やっばりアホバカなのはニホン人だけじゃないんだ…とフカク納得しつつ、なぜかホッと胸をなで下ろしてしまった自分に気がついて、赤面なのです。



三段壁ふたたび

千畳敷を離れて、車で3分ほど移動しますと、昨日エレベーターの前で時間切れになって地団駄ふんだ「三段壁」に着きます。昨日のリターンマッチというコトで、再度エレベーター乗り場に向かう一行ですが、途中でこんな場所を発見しました。

「一寸(ちょっと)まて。死んで花実が咲くものか」なのです。三段壁のエレベーター乗り場から100メートルくらいしか離れていない岩場に立っているカンバンなのですが、この古典的な警句がナイスです。

しかし、オカシな事に、こんな愛情溢れるカンバンを立てているわりには、ここの岩場って柵みたいなものが全然見あたらないのです。写真の立て看板から5メートルも前進すると「なんの障害もなく生涯を終えられる」シクミになっちゃっているのです。とっても不思議です。だって、そんなに自殺者が心配ならば、せめて乗り越えるのに時間がかかるような柵を設置すればいいのに…と思いません?

右の写真は、断崖にヘッピリ腰で右手を突きだして、デジカメを下に向けて撮ったモノです。つまり、この世にオサラバする決心をしたヒトが、最後に見る風景っちゅ〜コトになりますね (ーー;)

さて、いよいよ念願(?)の「三段壁洞窟エレベーター」に乗り込みます。エレベーターの入り口には、写真のようなオネーサンがいまして、親切に誘導してくれます。そして中にももう一人。地下の洞窟までの所要時間は数十秒という短さですが、当然その間に簡単な説明でもしてくれるモノと思い(だって一人1200円もかかるんですもん (T.T) 身構えてましたが、オネーサンは「………」。私たちも「………」。シラケたフンイキの中、無意味な咳払いなんかが響くという、私のもっとも苦手な状態が展開しつつ、地下洞窟に到着です。

中はさすがに洞窟だけあって、とっても涼しくて…と書きたいトコロですが、やっぱり下界と変わらず、クソ暑いのです。いや、湿気がこもっている分だけよけいにアツイ!でもって到着早々に気の弱そうなセーネンがポラロイド持って待ちかまえてまして、到着した客をパチパチと撮ります。洞窟内を一周して来たところで、二枚組のポートレートにして「いかがっスかぁ?」と販売するシステム。わたしはこういう「ムリヤリ販売」商法はキライですので、あまり購入したくないのですが「買わなくても結構ですから」とセーネンの青白い顔と細い声で言われますと、ついつい購入しちゃいました。あれって、ワザと気の弱そうなセーネンをバイトで雇ってるのかな?

洞窟内の観音様をお参りしてから、時計回りに中を一周します。エレベーターに乗るときに「本日は海が荒れていますので、洞窟の外には出られません 支配人」と張り紙がしてあったんですが、なるほど外への入り口の大戸はしっかりと鍵がかけられてます。スキマから外を見ますとものすごい勢いで波が進入してくるのがわかります。「こりゃ無理だわ。外に出たら一発で死んじゃうよね」などと三人で話しながら洞窟を進みます。

その支配人の張り紙には続きがありまして「ただし洞窟内の迫力は増しますので、スリルをお楽しみ下さい」と書いてありました。迫力ったって佐渡の金山みたいなカンジで、チョロチョロっと洞窟を掘る人形があったり、水軍の隠れ家が再現されてたりするだけで「なぁ〜んだ。たいしたコトないじゃん」と鼻で笑いながら一行は「あ〜アツイ、アツイ、ムシ暑い!早く上に戻ってお土産選ぶフリをしてクーラーで涼もう」と、歩みを早めます。

すると、道程も終わりに近づくころ、道の左側にトンネルが見えてきました。で、その周辺で「きゃー」とか「うわっ」っとかのヒメイが聞こえるのです ??

洞窟の中にですね、荒れた海の波が「どどどっ」っと入ってくるトンネルがありまして、運悪く現場を通った観光客が水しぶきの洗礼を受けてるヒメイだったんです。これかぁ、あの張り紙にあった「スリル」って…などと考えてましたら、写真のような波が「どわっ」っと私を攻撃してくるのです。しかし負けてはイケナイ!このショットをカメラにおさめなくては、と、使命感に燃えた私は、より迫力のある瞬間を撮るために、現場でネバります。すでに義母さんと妻は、とっとと安全地帯に待避
なんとか濡れながらも写真のような一枚をゲットし、さ〜帰ろ、と歩き出そうとした時、後ろから「すみませぇん」の声。

振り向くと、年の頃なら27、8の小股の切れ上がったキモノ美人が…と言いたいところですが、実際は二十歳(はたち)チョボチョボくらいの女の子たちが二人「あのぅ、この波しぶきをバックに写真撮ってもらえますかぁ」と使い捨てカメラを差し出します。

ホントはね、波しぶきがじゃんじゃんですし、向こうであまりの現場の荒れように魂を抜かれたミーヤキャットみたいなのが2匹でキョトンと待ってますから(お義母さん 重ね重ね…も〜いいか…)、一刻も早くデジカメに浸水しないうちに現場を離れたかったんですけどね。やっぱ若い女の子たちに頼まれると「ははは、いいっスよ」などと快諾しちゃって「すごく大きな波が来るまでちょっと待ってようよね?」な〜んてヨケイなコトまで言っちゃったりする、おやぢなのでした。^O^


サヨナラ和歌山、さよなら〆ちゃん